かながわ福祉ビジョン2040(創立25周年記念事業)
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出典:厚生労働省「国民生活基礎調査 主な介護者の状況」より作成 「公的扶助」は生計困難者となった場合に適用され、「保険医療・公衆衛生」は全国民を対象に、衛生面から社会の安定を図る役割を果たしています。もちろん、規模の違いや、施策として十分か否かといった議論はあるにせよ、日本の社会保障制度は、あらゆる世代の生活者を対象とした施策を整えていると考えられます。 33..福福祉祉ササーービビススをを取取りり巻巻くく課課題題 これまで述べてきたように、日本には、高齢者、障害者、子どもと子育て世代、そして、現役世代を支援するための諸制度があり、生活に密着したサービスが人々の暮らしを支えています。しかし、いまだに多くの課題が残されていることも事実です。 8 神奈川県「かながわ子どもみらいプラン―Ⅲ 計画の基本理念等」 図図 22--33--11 要要介介護護者者等等かかららみみたた介介護護者者のの続続柄柄のの推推移移 ≪≪全全国国≫≫ まず、介護保険においては、介護者に関する課題が挙げられます。図 2-3-1 からもわかるように、現在、介護者に占める同居家族、とりわけ「同居する子の配偶者(=主に息子の妻)」の割合は、制度の施行開始時の 2001 年の 22.5%から、2019 年には 7.5%に縮小しました。ただ、「配偶者」、「同居する子」の割合はほとんど変わらない一方で、「別居の家族等」の割合が 2001年の 7.5%から 2019 年には 13.6%と高まっています。多くの人が介護サービスを利用することで、家庭内介護のアウトソーシングが徐々に進んでも、主に配偶者と血縁者が介護を担うという基本的な構図はあまり変わっていないようです。核家族化の進展とともに、いわゆる老々介護は依然として多く、離れた場所に住む血縁者が介護のため親元に通うことで、心身の疲労や経済的負担、仕事への影響は避けられなくなっていると考えられます。 さらに気掛かりなのは、「不詳」という項目の割合が2倍に増えていることです。おそらくは、生活実態が把握されておらず、介護サービスはおろか、地域の支援さえアプローチできていない独居の要介護高齢者が増えていることが窺われます。介護の問題は、家族や家庭といった枠組みを超えたところにも広がりつつあるのかもしれません。 また、1990~2010 年の、いわゆる「失われた 20 年」に社会に出た世代は、2030 年代以降に高齢者の仲間入りをします。新卒以来非正規で雇用され、生涯を単身で過ごす人が比較的多いと考えられているこの世代が高齢期における生きづらさに直面した時、介護サービスの量的な整備のみならず、経済支援や孤立を防ぐ対策の必要性がいっそう高まると考えられます。これらを勘案し、神奈川県をはじめとする東京圏の地域性を考慮した高齢化対策が求められます。 次に、障害福祉サービスにおける課題として、障害者に対する理解の不足が挙げられます。障害者に対する差別や虐待、不適切なケアなどは依然として続いており、権利擁護を基本とした共生社会づくりが叫ばれてはいるものの、その実現は遅々として進んでいません。当事者と- 29 -

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