11.. ああららわわににななりりつつつつああるる社社会会保保障障のの限限界界 社会保障という言葉、みなさんも一度は聞いたことがおありでしょう。厚生労働省のホームページを見ますと、「社会保障制度とは、国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティネット」と書いてあります。 人間が何かに挑戦するときには、セーフティネットが必要です。それがなければ、私たちは失敗をおそれ、挑戦する意欲すらなくしてしまいます。社会保障は、私たちの生活や経済活動の基盤そのものといっても過言ではありません。 ところが、そうした重要性にもかかわらず、日本の社会保障には大きな三つの「壁」があります。ひとつ目は「申請主義の壁」です。 日本の社会保障は、事故や問題が生じたときに、自分で申請を行うことで給付してもらえる仕組みになっています。たとえば、年金や介護、高額な医療費、失業給付、生活保護など、いずれも受給者/利用者が申しでてはじめて、給付してもらえます。ですから、制度を知らない人、心身の不調等の理由によって行政機関にアクセスできない人は、サービスを利用することができません。 二つ目は「上下関係の壁」です。仮に申請にたどりつくことができたとしても、受給資格があるかどうかの最終的な決定権を持っているのは、行政など、供給サイドの人たちです。また、生活保護の利用者にケースワーカーが高圧的な態度を取ったり、専門職が要介護者にきびしい指導をしたりという話をしばしば耳にするように、「給付する側」と「給付してもらう側」との間には、垂直的で、固定的な関係が生じがちです。 三つ目は「消極性の壁」です。日本の社会保障では、歳をとる、病気になる、働けなくなるといったネガティヴな問題が起きたときには対処できますが、一人ひとりの成長や精神的、社会的な自律/自立といった積極的な目標はカバーしきれていません。 この「壁」のなかには、縦割り行政の弊害も加えて良いでしょう。発達障がいのある子どもが不登校になっているような場合、つまり、福祉と教育のはざまで苦しんでいる子どもたちの場合、それぞれの部局が業務をゆずりあい、制度からこぼれ落ちる問題があちこちで起こっています。 この三つの問題、1)申請主義の壁、2)上下関係の壁、3)消極性の壁は、私たちの社会が大きな変容を遂げつつある今日において、深刻さの度を増し、社会保障制度そのものを機能不然にさせつつあります。社会保障を根底から変えていくことの必要性を知るために、以下、この三つの壁について、もう少し踏みこんで見ていきましょう。 11))申申請請主主義義のの壁壁::ササーービビススへへののアアククセセスス保保障障へへ かかななががわわ福福祉祉ビビジジョョンン22004400策策定定委委員員会会委委員員長長 井井手手 英英策策 第第33章章 策策定定委委員員会会のの議議論論をを踏踏ままええたた展展望望 ――ビビジジョョンンのの理理念念とと提提言言―― - 34 -
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