- 40 -ソーシャルワークを生業とする人たち、すなわちソーシャルワーカーの定義といったほうが適切だと思われるからです。 ソーシャルワーカーを専門職に限定するという考えかたは、日本では一般的なものです。2017年に総務省に『自治体戦略 2040 構想研究会』が設置され、大きな注目を集めましたが、その報告書のなかでも以下のような文章が盛りこまれています。 「放置すれば深刻化し、社会問題となる潜在的な危機に対応し、住民生活の維持に不可欠なニーズを、より持続的、かつ、安定的に充足するためには、ソーシャルワーカーなど技能を習得したスタッフが随時対応する組織的な仲介機能が求められる」 ここでもまた、ソーシャルワーカーは専門的な知識を持った人たちとして描かれていることがわかります。 総務省がソーシャルワークの重要性を語ったことについて、福祉の世界では、「住民の生活上のニーズに民間の力も活用して対応するため、ソーシャルワーカーが組織的に仲介する機能が必要だとする報告書をまとめた…総務省がソーシャルワーカーの活用に言及するのは異例」(「福祉新聞」2018 年 7 月 17 日)と、大きな驚きをもって受け止められました。 なぜ驚かれたのでしょう。じつはここに問題の核心があります。それは、総務省は地方の行政や財政をあつかう組織であり、彼らが重んじる理念は福祉ではなく、自治だったからです。福祉をあつかうのは厚生労働省のはずなのに、自治をあつかう総務省がソーシャルワークについて踏みこんだ言及をおこなった、これはどういうことだ、というわけです。 ここで、ひとつの疑問が浮かびます。「ウェルビーングを高めるべく、人やさまざまな構造に働きかける」という目的、すなわち、単なるサービス提供をこえて、当事者の置かれている困難な環境じたいを変えていくという目的を、技能を取得した専門職だけで本当に達成することができるのでしょうか。 最近の動きを見ますと、地域包括支援センターにソーシャルワーカー(社会福祉士)を配置する義務が設けられ、また、ソーシャルワーカーを配置する自治体や社会福祉協議会も少しずつ増えています。 ただ、ソーシャルワーカーは専門職ではありますが、スーパーマンではありません。彼女ら/彼らが、地域のなかに入りこみ、行政の縦割りの壁をこえ、専門職間のネットワークを自らの力で作りあげ、当事者やその家族の困りごとを解消していくのは、簡単なことではありません。 むしろ、当事者や家族の置かれた環境を変えていく、という本来の目的がおざなりにされ、かねてから人手不足が問題となっていた事業の実施のために、専門職であるソーシャルワーカーが吸収されてしまうような事態が散見されるようになっています。 こうした事態を避けるためのポイント、それが「自治」です。 ソーシャルワークを機能させるためには、行政、社会福祉協議会、あるいは、高齢者介護施設や障がい者支援施設、児童相談所や児童養護施設といった諸機関はもとより、自治会・町内会やPTA、NPO、協同組合組織などもふくめた、アクター間の交流、情報の共有、地域全体のチームアプローチが求められると私たちは考えています。 こうした発想からは、さまざまなアプローチが浮かんできます。
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