- 44 -彼女ら/彼らが安心して当事者とむきあい、自分たちの仕事に誇りをもって専念することができないとすれば、それは、不正です。そして、その不正の犠牲者は、当事者とその家族であり、それは、未来のあなた、未来の私なのかもしれません。 さて、こうしたケアワーカーへの保障という視点を盛りこみながら、財源について考えたいと思います。 結論からいえば、消費税をもう 6%引きあげることができれば、2019 年に実現された幼稚園・保育園にくわえ、医療、介護、大学教育の無償化が可能になります。それだけではありません。義務教育の給食費や学用品費も無償化され、看護師、介護士、保育士、幼稚園教諭の給与も引きあげることができます。 念のためにいっておきますと、消費税に限定したのは便宜上のことです。法人税や所得税の富裕者課税も消費税とセットに議論されてしかるべきです。 それともう一点、以上の増税を行なってもなお、国民負担率は OECD 加盟国の平均程度にしかならない点も強調しておきましょう。それだけ日本の国民負担率が低いのであり、反対にいえば、自己責任の領域が広いというということです。 税の話は決して愉快なものではありません。しかし、分配のパイを増やさなければ、私たちは、自己責任の社会を変えることはできません。 もちろん、借金に頼るという考えかたもあります。ですが、借金は必ず次世代の負担を生みますし、それだけではなく、何が必要な支出か、何がいらない支出か、どの税で、誰がどの程度の負担をするのか、という大切な議論を不要にしてしまいます。 民主主義を大切にしながら、痛みと喜びを分かち合うこと。それは「いまを生きる私たち」の「未来を生きる人たち」への責任だと私たちは考えています。 もちろん、財源問題は、政治的にきわめて不人気なテーマです。ですが、みなさんには意外なことと思われるかもしれませんが、財源と給付を組みあわせた議論は、静かに広がりを見せはじめています。 みなさんは覚えていらっしゃるでしょうか。2017 年の衆議院選挙で争点となったのは、消費増税をおこなうことで、その財源が所得制限をつけずに、幼稚園や保育園の無償化、低所得層の大学の無償化にあてる、という政策の是非でした。 また、国の税金だけではなく、地方レベルでもこうした動きが起きています。その一例として、全国市長会が提案した「協働地域社会税」を見てみましょう(全国市長会『ネクストステージに向けた都市自治体の税財政のあり方に関する研究会報告書』)。 これは、住民税、固定資産税などに全国一律で超過課税をおこなう、あるいは地方消費税の税率決定権を自治体にゆだね、全国で税率を一律で引きあげるという提案です。その税収は、公共交通整備、コミュニティ活動等の拠点施設の支援、地域を支える人材の確保などに用いられるとされています。 急いで付けくわえますと、仮に、協働地域社会税を増税するとしても、先に示した消費税6%の増税にプラスアルファする必要はありません。なぜなら、医療や介護、教育の無償化に近づけていけば、その分、医療扶助や介護扶助、教育扶助といった生活保護が不要になるからです。この浮いた財源で協働地域社会税の引きあげ分は相殺されます。
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