かながわ福祉ビジョン2040(創立25周年記念事業)
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- 46 -それだけではありません。同居の有無にかかわらず、第一世代=80 歳、第二世代=55 歳、第三世代=30 歳、第四世代=1 歳という「4 世代モデル」が普通になってきています。 第二世代はまだ現役ですが、親の介護に追われ、子育てに大変な第三世代のアシストにまわれません。すると、残念なことに、第三世代では妻が仕事をあきらめ、子育てに専念せざるを得ない、という問題が頻発し、同様に、第三世代もまた、上の世代のアシストに回れず、第二世代が介護離職を迫られる、そんな負の連鎖が生まれつつあります。 むろん、核家族化が基本だとしても、この四世代で同居することをのぞむ世帯もあるでしょう。そうであれば、その人たちの住宅の取得、改修の際に、制度面で後押しすることが必要です。それは税制上の対応を取ることも考えられますし、直接、建設補助を出すような場合も考えられるでしょう。 ここで問われているのは、特定の家族モデルにとらわれず、さまざまな家族構成に応じて、柔軟に対応可能できるアシストの仕組みをどのように構築すべきか、ということです。 そのための第一歩として、まず、行政のほうで、地域に適した共生デザインを描き、実践するためのチーム作りを進めることを提案したいと思います。 それぞれの地域にはユニークな共生ビジョンを持ち、さまざまな専門性を持った専門家が少なからず存在します。たとえば、これらの情報をデータベース化できれば、それぞれの地域の特性、多様なニーズに合わせたチーム作りのための情報プラットフォームを構築することができます。 同時に、行政は、個別ニーズにより柔軟に対応するため、地域の特性にあわせて介護を「ハイブリッドサービス化」してはどうでしょうか。それぞれのニーズに応じて、介護保険適用サービスと、保険外の自己負担、有償サービスとを同時に組み合わせていけば、予算の心配をあまりせずに、細やかなニーズへの対応が可能になっていきます。 また、ソーシャルワークを自治と結びつける私たちの発想からすれば、重要なアクターは、地域のなかにこそ、存在しています。一例をあげれば、民生委員・児童委員さんなどは、地域で起きている問題を各機関につなぐうえで欠かせない人たちです。 ただ、高齢化による担い手不足が全国で起きていますし、深夜におよぶ電話の相談、時にはお金の相談に至るまで、ボランタリーサービスの域を超えた仕事の負荷もまた、問題となっています。 こうした仕事に対する対価を行政はどう考えるべきでしょうか。有償化は一案ですが、それが難しいのであれば、地域通貨の延長線上として、自分が活動して獲得したボランティアポイントを、将来自分がアシストを必要とするときに利用できるような、長い時間軸での互酬の仕組みを制度化してはどうでしょう。 行政にくわえて、事業者にも工夫の余地は大です。 私たちが、地域で暮らす、ということは、さまざまな世代の人たちが「共にある」ことを意味しています。それは、高齢者が地域のなかで孤立しないための枠組みづくり、世代をこえて互いが互いを「気にかけあう」街づくりと地続きです。 そうであれば、たとえば、独居から解放されたい高齢者と、安く部屋を借りたい若者とをマッチングするサービスを提供し、地域で「多世代生活」を希望する人たちどうしを結んでみてはどうでしょう。

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