かながわ福祉ビジョン2040(創立25周年記念事業)
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- 53 -高齢者介護の枠組みのなかであれば、これらのインフラを活用して、介護度に応じた居住空間、多世代が一緒に過ごせる空間を作ることもできます。公営住宅の空きスペースを活用して、地域福祉活動の拠点を増やしていくこともできるはずです。 自助、互助、共助、公助といった言葉が定着していますが、自助の領域、公助の領域と画然と役割・機能を区別するのではなく、これらを柔軟に組みあわせながら、地域、地域になじむような福祉制度を整備していくべきです。 そのプロセスでは、従来にない取り組みを地域じたいが評価する仕組みを取り入れ、「生活サービス」をたえずチェックしながら、更新していくことが重要でしょう。 66))私私たたちちがが変変わわるるたためめにに大大切切ななこことと 以上では、行政や事業者、そして地域に生きる一人ひとりが、どのような改革を進めていくべきかについて考えてきました。 改革の提言をするのは簡単ですが、それを実践していくためには、行政や事業者、そして、福祉にかかわるすべての人たちの意識変革が必要であり、また、改革をさまたげる要因、非効率性を生みだす要因についての検討も行わなければ、実効性のある提言とはなりえません。 すでにこれまでにも、「してあげる」という上下の関係から脱却できない現状、構造を変えるという視点を失った「雇われワーカー」の限界等について言及してきました。ですが、これらにとどまらない、より大きな視点から、福祉の変革を妨げる要因の改善方法について私たちは考えていかねばなりません。 まず、大規模社会福祉法人のなかには、旧態依然たる経営方法を採用しているものが散見されます。これを改善するための方策として、行政は、社会福祉法人と地域に密着した中小企業などとのコンソーシアム(事業者連合体)の設立を容易にするための環境整備を進めていくべきです。 コンソーシアムをつうじて、ヘルスケアサービスの顧客満足度の向上、ICTによる業務の効率化といった企業経営手法を社会福祉法人サイドが取り入れることができます。また、現場の人たちも、福祉法人のなかに閉じこもるのではなく、職場を適切に異動しながらキャリアとスキルを積める体制を整えることができますし、中小企業自身も、ここでの協働を基礎に、地域課題の解決に向けたソーシャルビジネスのモデル構築を進めていくことができるようになるでしょう。 経営効率化との関連でいいますと、事業所の業務負担が重い毎月の報酬請求を共同事務化し、事業資源をケアに集中していくべきです。あるいは、事業実績に乏しい法人が福祉サービスに新規参入しにくい現行の仕組みを変えていくために、プレゼンによる事業評価、参入を認め、若い経営者による福祉サービスの変革を加速していく方法も考えられます。 近年、AI の普及や DX の進展により社会の仕事が全般的に効率化されつつあります。これは、社会福祉法人に企業経営の視点と価値、DX を積極的に導入し、将来の福祉のあり方にどのような価値発揮で貢献するのかという事業ビジョンを掲げねばならない状況が生まれつつあることを意味しています。 その際、強調しておきたいのは、これまでと違って、マンパワーを「人でなければできない仕事」にシフトさせるという視点です。

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