徐々に気付いてきたようです。考えて改善できることが、僕たちの強みだと思います。 ――ぐるんとびーと、その他の法人との違いはどこにあるのでしょうか 菅原さん:固定観念にとらわれているか否か、そこが一番大きいでしょうね。 例えば、脳梗塞で半身まひの人が、「車で海沿いの道をドライブしたい」と望んだとします。大抵の事業所は、「そんなの無理だよ」と言うでしょう。介護保険の中で、自分たちに出来る範囲の中で考えているからそういう結論になるんです。どうして海沿いをドライブしたいのか。もしかすると、「歳はとっても、若い女の子にモテたいからだよ!」という気持ちがあるからかもしれない。「だったらカッコいい電動車いすに乗って犬の散歩をしていれば、女の子のほうから声をかけてくれますよ!」ってことで、クラウドファンディングで必要な費用を集めるという方法だってある。オンライン技術が、地域課題を独自に解決することにも役立つでしょう。 先ほどの研修での話ですが、職場の隣に法人が建てたアパートがあって、しかも職員は安く借りられるとしたら、是非そこに住みたいと。仕事終わりに、入所者と一緒に夕食が食べられるならこちらも助かるし、夜勤者のサポートにもなると。何かが変わればやってみたい、というスタッフも実はいるんですね。出来ないと思っているだけで、課題に対処する選択肢を編み出せれば、どの事業者も固定観念から脱却出来ると思います。 ――しかし、「今を変えてやってみたい」と考える研修スタッフの中にも、ぐるんとびーのスタッフたちが仕事と生活とをシームレスに行き来しているのを目の前に、「自分の暮らしを犠牲にしてまで仕事に向き合えるだろうか」と感じた人もいたそうですね。はたして、ぐるんとびーのサービスモデルに追随できる事業者はどれだけ出てくるのでしょうか。 菅原さん:ぐるんとびーのスタッフは生活を犠牲にするというより、暮らしの中に仕事(介護)があるワーク in ライフと捉えている人が多いので、仕事と生活とをはっきり区別したい人には、僕たちと全く同じことは出来ないと思います。もしかすると、ワーク in ライフを良しとする人材を獲得できる事業者は、生活に溶け込む形で利用者と喜びを分かち合えるようなサービスを実践し、サービスをビジネスと割り切る人材が働く事業者はより専門的で高単価なサービスを提供するというように、個性の異なるサービス展開が広まっていくのかも知れない。恐らく、都会とは逆方向に行けば行くほど前者のような働き方を志向する人が多いのではないかと思うので、そのポテンシャルを伸ばせる地域では「ぐるんとびーモデル」の強みを発揮できると思います。 ただ、こうして成功事例のように取り上げていただくんですけど、僕らの取り組みがすべて正解だとは思っていません。常に失敗して修正を繰り返す作業の連続です。しいて言えば、そうやって更新し続けていることが先進事例と言われる理由かもしれません。もちろん、介護サービスのすべてが「ぐるんとびーモデル」になる必要はありませんが、ケアを画一化しないためにも、ワーク in ライフに魅力と可能性を感じる人を見出していくことは大事だと思います。 ――では今後、介護保険制度の枠内でサービスを提供する事業者と、その枠を超えて取り組む事業者とが出てきた場合、国の方針や制度自体が変わる可能性はあるとお考えですか。 菅原さん:制度も変わるかもしれませんが、同じ地域の中にコンセプトの異なる事業所が点在していて、利用者自身が受けたいサービスを選択できることに価値があると思います。僕はこ- 64 -
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