かながわ福祉ビジョン2040(創立25周年記念事業)
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――サービスの報酬で、法人全体や事業所の運営はうまく成り立っていますか。 雄谷さん:共生型サービスで運営が成り立つのかとよく聞かれますが、私たちの「輪島 KABULET」は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の事業モデルになっており、それには健全な運営が前提になります。健全運営の理由ですが、例えば厨房設備を保育やその他の事業所とで供用したり、総務部門は一本化すると。また、サービスの本体報酬の低減が厳しくなってきていますから、ニーズの高いサービスや、縦割りの福祉では見落としがちな共生型サービスに伴う加算項目を、丁寧に見落とさないよう算定することが肝要です。 ――ごちゃまぜの発想は、福祉サービスの運営にもメリットをもたらすということですね。 雄谷さん:ごちゃまぜによって、デイサービスに通うお年寄りが、子どもに会えるのを楽しみにして利用率の向上につながります。お年寄りや子どもに会うことが楽しみな障害者も、元気をもらって就労の励みにつながったりしています。人は人と関わることでポジティブになるという公衆衛生学の研究結果があるので、共生型の福祉は理に適っているんでしょうね。 ――では、共生型サービスをもっと取り入れやすくする制度に変えていくべきなのでしょうか。 雄谷さん:生きがいを持つ人とそうでない人とでは、要介護リスクが倍、生存率が3倍違うという研究結果があります。障害、高齢という単体サービスの専門性ももちろん大切ですが、制度云々の前に、その領域にとどまらない効果があるということを理解しておく必要があります。 ――お互いのことに関心を持ち、困った時に支え合えるような環境作りが必要だと多くの人が考えながら、公私にわたって他人が関わることに抵抗を感じる人もいるでしょう。ごちゃまぜのコンセプトをさらに育むには、何が必要でしょうか。 雄谷さん:地域というのは、色々な人間がいるから面白いし、また、次々に問題も起こるんです。表面的な問題が起こらない地域を作ってしまうと、むしろ地域力は落ちます。命に係わるようなことは別として、一つ問題を解決すれば次の問題が起きてくることを前提に、地域で対処していくというプロセスが地域力を伸ばすうえで必要です。また、「問題は起きるものだ」という心構えがあれば、色々なことに寛容な共生社会の素地ができていくと思います。 ――だとすれば、佛子園の皆さんのように、当事者の間に立って互いを結び付ける、問題解決にアプローチするためのファシリテータ役が必要になるかと思いますが。 雄谷さん:障害について何も知らない地域の人が、突然大声を出す障害者を見たら驚きますよね。危害を加えるつもりで大声を出しているのではないことを、私たちが専門家として障害特- 73 -

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