- 78 -きな医療法人や株式会社よりも非営利法人のほうじゃないかと思うんですね。それに、応援してくださる方々のご寄付も、地域のその他の活動に役立てることが可能です。それが、ケアタウン小平チームが NPO 法人を母体としてスタートした理由です。 ――ケアタウン小平チームがボランティアの振興に力を入れる理由はそこにあるのですね。 山崎さん:病院のスタッフと患者の間でも話はできますが、やはり「医療職と患者」という関係性は排除できません。でも、ボランティアさんとは地域の人同士の立場で話ができますから、それならば患者さんの社会性の担保につながると思います。ただ、ケアタウン小平チームでも、ボランティアの皆さんの協力でデイサービスなどの活動はできていますが、在宅の患者を個別訪問するところまではできていませんので、そこはこれからの課題です。 ――子育てや文化スポーツの振興にも関わっていらっしゃいますね。 山崎さん:終末期の患者は様々なものを失っていく過程にあるので、たとえ身体的苦痛が和らげられたとしても生きる意味を見失いがちです。自分の力では動けず、誰かの手を借りなくてはならず、しかも、間もなく命が終わると解っている状況下ですから、そうした思いを受け止め、寄り添って介護をしてくれる誰かが居れば、人間として大切に見守られていると患者自身も感じられるはずです。つまり、他者との関係性の中で生きていることを実感できるわけです。 不登校のお子さんやその親御さんも一緒で、すでに十分頑張ってきたその人たちに周囲は叱咤激励をしてしまいがちですが、辛い立場や悩みを受け止めてくれる人が寄り添うほうが、生きる希望を見出せると思うんですね。いじめがあったり、追い詰められたり、人との関係性が希薄で苦悩に満ちた社会には、「そのままでいいんだよ」と受け入れてくれて、見失いかけた自分を再発見できる居場所が必要なんです。だから、ケアタウン小平チームが地域の中で事業を展開していくのであれば、子どもたちがいつでも自由に遊びに来られて、体を動かせる「居場所」も提供しようと。私たちのこれまでの取り組みから見えてきた人間の在りように目を向ければ、子育て支援も私たちの大事な役目だよね、と考えた結果なんです。 ――他者との関係性の中で自分の存在意義を見出せない人が増えているという意見は、確かに他でも聞かれますね。 山崎さん:そうだと思います。ホスピスケアを展開してきた私たちの周りには、ご遺族の関係者も大勢いらっしゃいます。誰かを亡くしたことで先々の生きがいを見失う人は多いのですが、同じ体験をした人がその気持ちを受け止めてくれて、互いに思いを語り合えれば、悲しみに暮れる自分を肯定できますね。亡くなったのが親なのか、配偶者なのか、子どもなのかによって
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