かながわ福祉ビジョン2040(創立25周年記念事業)
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66..海海外外のの先先進進事事例例 ((11))オオラランンダダ エエルルメメロロ((精精神神科科病病院院をを中中心心にに形形成成さされれたた町町)) エルメロは、精神科病院を中心に形成された町です。はじめに町があり、そこに後から病院が作られたのではなく、最初に病院があって、その周りに町が形成されてきたケースです。 病院には門や塀といったものがなく、敷地内は誰でも自由に出入りできる開かれた空間となっています。また、この町には精神科病院だけではなく、障害のある人が利用する各種施設や青少年の更生施設などもあり、福祉はエルメロの経済の柱となっています。エルメロの人口の約半数は障害のある人たちが占めており、彼ら彼女らが働く店や作業所が多数あるほか、入院患者や病院の職員たちも普通に街中を歩いています。障害のある人たちが健常者を包摂する町ともいえ、緑が多く住みやすい環境は、一般の人たちから観光や移住先として選ばれるほどの人気を誇っています。 この町は、政治家や権力者が福祉のためだけに計画的に作った町ではなく、福祉、経済、教育といった人々の暮らしに欠かせない様々な要素が並行してつくられた町です。 ((22))ドドイイツツ ベベーーテテルル((医医療療とと福福祉祉のの町町)) ベーテルはビーレフェルト市にある総合医療福祉施設で、1867 年に設立されたてんかん患者の療養施設に起源を発し、現在は各種の医療施設や学校、障害者のための様々なケアサービスが整えられています。もちろん、ベーテルとビーレフェルト市街との間に塀や壁はありません。 障害者を護る対象としての弱者ではなく、「施しよりも仕事を」という理念に基づいた多種多様な仕事(約 2500 種類)がここには用意されています。そのため、様々な企業がベーテルに仕事を依頼しており、寄付金額も相当量に上ります。それが、約 150 年の歴史の中でごく自然に培われてきたのです。 第二次世界大戦がドイツに暗い影を落としていた時代、ナチスの優生思想に基づく安楽死政策下にあっても、ベーテルでは一人の犠牲者も出さなかったという逸話が残っています。 ((33))フフラランンスス ひひととつつ屋屋根根、、ふふたたつつ世世代代((高高齢齢者者とと若若者者ととのの共共同同生生活活)) ひとつ屋根・ふたつ世代とは、フランス政府によって立案された高齢者と学生との世代間同居政策です。その発端は、2003 年の猛暑によって全仏で 1.5 万人が亡くなり、犠牲者の多くが独居老人であったことがきっかけでした。 学生は高齢者と一緒に夕食を食べたり手伝いをしたりすることで、家賃が安くなる仕組みです。NPOや企業が仲介機関となって高齢者と学生を結びつけています。「2つの世代のアンサンブル」というNPOは、学生と高齢者の信条や趣味など徹底した事前調査を行うことでマッチングの確度を高め、生活のルールを明文化することで同居生活のトラブルを未然に防いでいます。単に同居することで家賃を浮かせたいという意識だけの学生や、学生をヘルパーとして手配したいという高齢者からの申し出は断られており、お互いが対等な関係で暮らすことが共同生活のベースになっています。 日本では、前述した株式会社あおいけあが運営する「ノビシロハウス」をはじめ、福井大学と福井県社会福祉協議会が協働して異世代ホームシェアを運営している事例があります。 - 81 -

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