1 厚生労働省「令和 2 年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える」 22004400年年へへ向向けけてて 皆さんは、「福祉」は誰のためにあるものだとお考えになるでしょうか。社会の要請を受けて介護保険制度が生まれた経緯や、社会保障費の半分近くを高齢者への年金給付が占めている現状を見ると、福祉サービスの対象者の大部分は高齢者なのだと思われるかもしれません。 また、2025 年の構築が目指されている「地域包括ケアシステム」も、将来にわたる介護保険制度の持続性の観点から高齢者のための住まい、医療、介護(予防) 等を核に議論されることが多いことから、「福祉は高齢者を主なターゲットにしている」というイメージが社会に色濃く定着していると思われます。 しかし、社会保障制度は国民の福祉を増進する手立ての一つです。それも、制度を支える仕組みが機能してこそ成り立つものですから、少子高齢化の進展と本格的な人口減少社会に直面する日本の社会保障制度を持続させるために、「担い手不足・人口減少の克服」、「新たなつながり・支え合い」、「生活を支える社会保障制度の維持・発展」、そして、「人生 100 歳時代」といった議論が欠かせません 1。 2020 年からは、新型コロナウイルスの感染拡大によって、医療のひっ迫、社会機能の低下、巨額の経済損失、物理的または精神的な社会の分断などを経験しました。これらの禍は、あらゆる世代の誰の身にも起き得ることですから、制度を超えた支え合いがなくては、100 年にも及ぶ人生を生き抜くことは難しい時代へと突入したことを感じます。 「福祉」という二文字の漢字には、どちらも「しあわせ」、「さいわい」という意味があります。国民の福祉の目的が、単に弱い立場にある人たちを助けることばかりではなく、すべての人たちがより良く生きていけるように見守ることであるとすれば、つまり、福祉は、あらゆる人たちのためにあるといえるのではないでしょうか。 「「人人生生 110000 歳歳時時代代」」をを楽楽ししむむ 「少子高齢化」と「人口減少」は、もはや不可逆的な趨勢です。また、多くの人たちにとって「人生 100 歳時代」は、現実のものになりつつあります。この2つの事実の中で、私たちは人生をどう生き抜いていけばよいのでしょうか。 人口と経済活力を維持する観点から、国内外からの人口流入を促進する旨が謳われているように、県内の外国人労働者は増加傾向にあり、周辺都県からの社会増も続いています。ただ、県内で人口流入が見られるのは、横浜・川崎地区といった、産業立地や消費立地上で優位にある地域が中心であり、県西地区や横須賀三浦地区では人口そのものの減少が続くと予測されています。一定地域で一時的な社会増を図ることはできても、人口減少という大きな流れを変えることは相当困難であると推測できます。 ところで、私たちは、65 歳を過ぎた人たちを高齢者だと認識してきました。しかし、老いや障害、疾病に関する研究が進み、65 歳を境に高齢者になるという意識は社会の中でも少数派となっており、多くの 65 歳以上の人たちが生涯現役であり続けたいと望んでいます。積み重ねら- 89 -
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