- 90 -れた知見と経験を仕事に生かし、働く人がいます。認知症になっても、長年担ってきた家事や作業を得意事として発揮できるコミュニティがあります。こうして、元気で働く意欲を維持しながら社会に参加することは、「より良く生きる」という福祉の意味にも合致します。 障害者に対する社会環境も変化しています。障害者福祉の分野では、「できることを見つけて伸ばす」、「自分の頼れる支援者をいくつも持つ自立」に価値を置く支援がはじまっています。 子育て環境も、第4章で紹介したように、職場の中に子育てをする環境がつくられているところが出てきました。これは、地域で子どもを育てる仕組みとしての形であり、その環境で育った子ども達が新たな地域社会の関係性を生み出してくれることを期待できます。 こうした生き方や暮らし方を選択できる地域を育むことで、創意工夫を凝らした福祉サービスが将来的に地域産業の柱になっている可能性も考えられます。 社会には、多くの選択肢が存在します。「より良く生きる」ことや「幸せ」の意味は、人それぞれに異なることでしょう。多様性を包摂する地域には、一人ひとりが 100 年を生き抜くために個別の人生設計図を描き、必要に応じて誰かの力を借り、時には最新の技術を駆使することで、自分で選べる人生を歩むことができます。そして、老若男女を問わないあらゆる世代が活躍でき、共に生き、社会を創る仲間なのだという意識が醸成されている未来を想像しています。 人口や経済など、多くの指標上で縮小が避けがたい状況下にあっても、生きるための選択肢が豊富に揃う地域があることで、神奈川県が掲げる「生き生きと働いて経済を活性化させる」、「若い世代の結婚、出産、子育ての希望をかなえる」、「魅力にあふれ誰もが活躍できる地域社会づくりを進める」という基本目標を叶えられる可能性があるのではないでしょうか。 2040 年に、本書を読んでくださっている方たちはもちろん、多くの方たちが、人生を楽しむための選択肢にあふれる神奈川県で、より良く暮らしていることが望まれます。
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